【オモテ面】

障がい福祉サービス事業における法的な整備の状況は、本紙vol.007でも紹介したように
現在のような状況は、平成25(2013)年4月1日に施行された『障害者総合支援法』によって整いました。
あわせて平成28(2016)年の『障害者差別解消法』の施行で、より差別解消に向けての法整備が整いました。
このような経緯はあるものの、本来は障がい者であっても日本国憲法で基本的人権として尊重され、守られるべきものなのです。

基本的人権の尊重を定めた
日本国憲法のもとに
障がいの有無に関係なく守られる

 障がい者の守られるべき権利を語る時に、忘れてはならないのは、法律の在る無しに関わらず、障がいの有無に関わらず、日本国憲法において、私たち一人ひとりは基本的人権が尊重され、守られているのだということを強く認識すべきではないかということです。
 憲法というとお堅い感じがするかもしれませんが、わが国においての最高法であり根本法であり、すべては、この憲法に則って考える必要があります。特に「基本的人権の尊重」は日本国憲法における「国民主権」「平和主義」と並ぶ三つの大きな柱の一つであり、国民全体として守らなければならないものなのです。
 これに関しては障がい福祉サービス事業を行う上で不可欠な資格であるサービス管理責任者の資格取得研修においても、真っ先に触れられている項目であり、障がい福祉の根幹にあたるとさえ言えます。憲法に関しては日常的に語られることは少ないと思いますので、今回は改めて確認をしていきたいと思います。

基本的人権の尊重のもと
幸福追求に対する国民の権利が
保証されている

 下記の図は、日本国憲法における基本的人権に関する項目を定めた個所となります。すべて「第三章 国民の権利及び義務」の章に定められ「基本的人権」を定めた第11条、「個人の尊重と公共の福祉」を定めた第13条、「平等原則」を定めた第14条、そして「生存権及び国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務」を定めた第25条の4つが、障がい福祉に携わるものとして押さえておくべき項目となります。
 「この憲法が国民に保証する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。」「すべて国民は、個人として尊重」され「幸福追求に対する国民の権利」については「最大の尊重を必要」とされ、「法の下に平等」であり「差別されない。」「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とされてるのです。
 つまり基本的人権とは、「最低限度の生活を営む権利」だけではなく「幸福追求に対する権利」をも保証しているのです。単に暮らしていける、住まいがある、食事ができる、というだけではなく、「幸福追求」に対する権利が認められ尊重されているのです。
 何がしかの障がいがあっても、それぞれ各個人が、自分自身の幸福を追求しても良いとしている点は、障がい福祉サービス事業に携わる者にとっては、重く、心すべきポイントとなります。

障がい福祉サービス事業者は
ご利用者の幸福追求の妨げ
となっていはならない

 例えばグループホームを運営する事業者が、「法定基準を満たした施設を提供しているから問題ないだろう」という考え方では、果たしてご利用者の幸福追求の権利を尊重していると言えるのか?という命題が生まれます。やはりご利用者にとってより高い満足、より多くの喜びを考慮し、利用者目線で考えていく必要があります。
 部屋の広さはもとより、食事面や入浴面、そもそもの交通の便を考えたロケーション等、より快適で社会生活が営める、各個々人の幸福追求に資することが出来る環境を提供出来ているのか?
 また支援をする職員は、どれだけ障がい特性やご利用者お一人おひとりの思いを把握し、理解し、それに沿った支援が出来ているのか?さらに言えば、新型コロナのような感染症対策や虐待防止などの対応が出来ているのか?等々という様々な視点から考える必要が求められているのです。
 と同時に近隣の皆様のご理解、特に地域生活移行、共生社会の実現という視点でのご協力が不可欠となります。

【ウラ面】

障がい福祉に関わる
法制度の体系を
理解する。

 障がい福祉において、日本国憲法の基本的人権の尊重がベースとなっていることは、ご紹介した通りですが、障がい福祉そのものに関する法体系も理解しておく必要があります。
 本紙vol.007で紹介したように、現在の支援のベースとなっているのは平成25(2013)年4月1日に施行された『障害者総合支援法』です。しかし、それ以前に定められたのは『障害者基本法』で、これは昭和45(1970)年に制定され、最終改正が平成25(2013)年6月26日、平成28(2016)年4月1日に施行されています。『障害者基本法』では日本国憲法に則り、第一章・総則、第一条(目的)には、次のように定められています。「この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念に則り、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。」
 上記に明らかなように日本国憲法の精神を特に障がい者に視点を合わせ、再度明確にした法律であると言えます。
 さらに『障害者基本法』から身体・知的・精神という三つの障害種別に沿った法律『身体障害者福祉法』、『知的障害者福祉法』『精神保健及び精神障害者福祉に関する法律』、また、障がい児に対応した『児童福祉法』『発達障害者支援法』の合計して5つの法律が存在します。
 これらの法律に基づき、どのように支援をしていくべきかを定めたのが『障害者総合支援法』となります。

1)障害者総合支援法:現在の障がい福祉支援の根幹をなす法律
2)障害種別に定めた各法律:障がい種別に分かれて制定された支援法
3)障害者基本法:日本国憲法の基本的人権の精神を障がい者にフォーカスして制定された法律
4)日本国憲法:「基本的人権」「平和主義」「国民主権」の三大柱を定義した最高法

 これらの法律は、日本国憲法の基本的人権の尊重をベースとした法律で、障がい者支援に関して定めた法律ですが、平成28(2016)年施行の『障害者差別解消法』は、支援とは別の視点で障がい者差別に関して定められた法律となります。
 本来であれば、日本国憲法における基本的人権の尊重から始まり、差別などあってはならないのですが、残念ながら今もって社会の中には障がい者差別が存在します。これは世界基準でみても恥ずべき話であり、世界基準に沿うべきように定められた法律なのです。一説には、設立当時に決まっていた「2020東京オリンピック・パラリンピック」に合わせて、国際的なレベルでの差別解消を実現するために制定されたともいわれています。それだけ、日本は国際的にみて遅れていると言え、残念ながらわが国においては、障がい者差別は、まだまだ日常茶飯事であり、恥ずべき状態であるのが現状です。
 差別は一人ひとりの心の中に存在します。障がい者を犯罪者や変質者扱いする風潮は根強く残っています。そうした風潮に対して毅然として対峙するためにも、日本国憲法の基本的人権の尊重をはじめとする法的根拠への理解が不可欠であると思います。

■『障害者差別解消法』施行にあたって制作されたパンフレットに記載されている「不当な差別的取扱い」事例
  https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/sabekai/leaflet-p.pdf