vol.008(21/10/15発行)『WeThe15』
【オモテ面】
『WeThe15』というキャンペーンが提唱され、開会式では、ロゴが映し出され、メッセージが発表されました。
これはIPC(国際パラリンピック委員会)を中心に国際障害同盟など複数の団体が関わって行なわれている運動です。
世界の障がい者数は全人口の15%存在し、世界中の障がい者への偏見や差別をなくすための試みとして行なわれています。
全世界では12憶人、全人口の
15%の障がい者が存在する。
障がい福祉は世界的な動き。
新型コロナの影響で、開催が一年延期された東京パラリンピック2020は、162の国と地域並びに難民選手団で、参加人数は約4400人、共生社会の実現に向けて「多様性と調和」を掲げ、開催されました。
開会式の中で国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長は『WeThe15』に関して以下のように述べています。
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私たちは世界を変えたい。そのためにIPCと国際障害同盟とで『WeThe15』を立ち上げました。今後10年間にわたり、『WeThe15』は、世界の15%にあたる何らかの障害を持つ人々がどのように認識され、扱われているのか、グローバルレベルで挑戦していきます。
20の国際機関、市民社会、企業、メディアの支援を得て、世界の12億人の障害者をインクルージョンアジェンダの中心に据えます。(中略)
選手のみなさんのパフォーマンスによってそれぞれの運命が変わるかもしれません。しかし、最も重要なことは、みなさんが12億人の人生を永遠に変えうることです。これこそが、人生やコミュニティを変革するスポーツの力なのです。変化はスポーツから始まります。そして明日から、パラリンピックアスリートは世界を変えるために再びスタートを切ります。
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そしてさらに、アンドリュー・パーソンズ会長は閉会式において、以下のように発言しています。
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よりよい形での再建を目指す中 、世界人口の15%を取り残すことはできないのです。
アスリートの向こうには、大変すばらしい活躍をした彼らの向こうには12億人の障がい者たちがいます。
彼らも、一市民として共生社会で活動したいと思い活動できるのです。それが ルードヴィッヒ・グッドマン卿という パラリンピック創始者の願いでした。
『WeThe15』を通してグッドマンのレガシーをさらに高めたい。グローバルなムーブメントを通しアクセスを可能にし キャンペーンを展開したいと思っています。今週、こう言いました。障がいを持つ人は認められるためにすごいことをしなくてもいいはずだと。スポーツで、扉は開かれました。今度は、私たち一人一人が私たちを分断する障壁を 打ち壊すときです。
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東京パラリンピックの中継TV放送やWebサイトを通して放映されたキャンペーン映像では障害のある人を「特別な存在」または「感動的な存在」としてではなく、障害を持たない人々、いわゆる健常者と同じ課題を抱えた普通の人々とした上で、無視するのではなく、受け入れるべき存在として紹介しています。
左図は『WeThe15』サイトの中で紹介されている「私たちの目的」とされる項目です。この中で使われている「インクルーシブ」とは「包み込むような/包摂的な」という意味であり、「仲間はずれにしない」、「みんないっしょに」という意味です。そして「ソーシャル・インクルージョン」とは 「あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う」という社会政策の理念を表した言葉であり、『WeThe15』の精神にも通じます。
※出典:「WeThe15サイト」 https://www.wethe15.org/ja/the-campaign
【ウラ面】
日本における障がい者比率は7.6%
『WeThe15』の15%との
2倍差をどう考えるのか?
下図は厚生労働省が毎年発表している『厚生労働白書』に付随している「人口100人でみた日本」の図版です。
本紙でも何度か記載しているようにわが国における障がい者数は、全人口の7.6%と言われています。この7.6%と世界における障がい者数である15%では、およそ倍の開きがあります。この2倍差をどう考えるべきなのでしょうか?
わが国においては、障がい者数はあくまでも障害者手帳の発行数によってカウントしています。障害者手帳とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼称です。
わが国・日本においては、実際に障がいをお持ちの方でも、この3種の手帳のどれかが発行されていなければ、障がい者としてカウントされていない事になります。
これまで本紙で紹介してきたように、例えば障がい児は毎年1万人超増加しています。また『8050問題』における「ひきこもり」と呼ばれる方々は、なんの認定もされておらず、もしかするとその方々の中にも一定割合の障がいをお持ちの方がいるかもしれません。これらを考えあわせた時に『WeThe15』の持つメッセージは、世界的な視点で、わが国の障がい福祉を見つめ直し、一日も早い世界レベルでの視座を持つべきであることを教えてくれています。
『東京パラリンピック』で感じた
障がい福祉の現場との違和感、
それを大事にしていきたい。
もう一つ、東京パラリンピックに関連して気づかされたことがあります。それは障がい福祉の現場にいる者として、パラリンピックだけで障がい者について語られることの違和感です。
障がい者とは、身体、知的、精神の三分類の方々を指します。しかしパラリンピックで紹介される選手の大半は身体の方々であり、一部、軽度な知的の方や精神の方も見受けられるものの、実際の障がい福祉の現場で向かい合っている方々とは異なる、という点です。
先に紹介したアンドリュー・パーソンズ会長の「変化はスポーツから始まります。」「スポーツで、扉は開かれました。今度は、私たち一人一人が私たちを分断する障壁を 打ち壊すときです。」というメッセージには、この違和感を乗り越える重要なヒントを投げかけているように思われます。
きっかけはパラリンピックかもしれません。しかし、それをきっかけに障がい者のこと、障がい者の置かれている環境や実態、障がい者の就労環境のこと、障がい福祉施策のこと、障がい福祉サービスのこと等々を少しでも知っていただき、「ノーマライゼーション」もしくは「ソーシャル・インクルージョン」という 「あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う」という社会政策の理念が実現できるような社会になって欲しいと願います。
わが国の障がい福祉は、本当にまだ始まったばかりであり、大切に見守り、育てていく必要があります。皆様方におかれましても、さらなるご理解、ご協力、ご支援をお願いいたします。
『WeThe15』に参加している団体:世界人口の15%を占める地球の12億人の障害者のために、現在から2030年までの変化を加速するために集まっているのは、IPC、スペシャルオリンピックス、Invictus Games Foundation、国際聴覚障害者スポーツ委員会(ICSD)、IDAです。 、国連人権、ユネスコ、国連SDGアクションキャンペーン、欧州委員会、The Valuable 500、グローバルシチズン、グローバル障害イノベーションハブ、国連文明の同盟(UNAOC)、国際障害開発コンソーシアム、C-タレント、ATscale –支援技術のためのグローバルパートナーシップ、ゼロプロジェクト、および支援技術組織のグローバルアライアンス(GAATO)。
※出典:『WeThe15』サイト https://www.wethe15.org/