vol.011(22/01/20発行)『安全管理員会、虐待防止委員会』

【オモテ面】

本年、令和4(2022)年は、オミクロン株の猛威とともにスタートした感じもします。
当法人においては安全委員会を中心に、新型コロナの感染予防対策を万全に行っており、
現在までご利用者の皆様ならびに職員においても一人の感染者も出していません。
これも当法人における運営ノウハウの一つと言えます。今回はこの安全委員会と虐待防止委員会に関して紹介します。

獣医師経験者が
委員長を務める
安全委員会。

 当法人には社内の業務活動としていくつかの委員会組織が存在し、活発に情報交換、意見交換や各種の啓もう活動、ルールの徹底や実践を行っています。
 その一つが安全委員会であり、委員長を務める松田参与は、獣医師であり、培った医学的な専門知識も活かしながら、委員会をリードして運営してきています。
 安全委員会とは、その名の通り当法人の各施設内での安全管理、維持、向上を目指すための活動を行っている委員会ですが、この二年間は主に新型コロナという未知の感染症対策に追われた感が否めません。しかし本来、「安全」とは何も新型コロナだけではなく、ノロウイルスをはじめとする他の感染症対策も行う必要があります。ここで松田委員長が獣医師経験者であることが活かされています。動物の世界は人間よりも多くのウイルス感染に対応する必要があり、感染症に関しては、より詳しい知識や感性のもとに対応しているといえます。
 これら感染症対策はもちろんのこと、施設運営の基本ともいえる防火・防災設備のケア、建物の安全をおびやかす各種の不具合に関する対応や修繕、ハザードマップを意識した避難訓練の実施並びに管理、関係する消防署や役所との連携、法人内での啓もう活動などの「安全」に関係する事項への対応全般を任務として、おおよそ月に一度開催しています。
 委員会の構成メンバーは各事業所から選出され、中には看護師等医学の専門知識を持つメンバーも含まれています。
 昨夏の連日の猛暑日の際には、最高気温の予報をもとにした熱中症に対する危険度の情報を法人全体にインフォメーションするなど日常的に細やかな活動を行っています。

障がい福祉サービス事業において
必須となる虐待防止に対しても
いち早く対応。

 さらには安全委員会と併設する形で運営されている虐待委員会においては「虐待防止」を中心に活動を行っていますが、障がい福祉においては、この「虐待防止」が大きな課題となります。
 虐待というと通常は暴力などの身体的な虐待をイメージしがちですが、障がい福祉の現場では、身体的、暴力的な行為はもちろんあるべきではありませんが、例えば、なかなか落ち着きがないご利用者に対して、施設の入り口にご利用者本人が開けられないような鍵をかけて外出禁止にするのも虐待にあたります。
 また普段の生活の何気ない言葉遣いも虐待に相当する可能性があります。
 障がい福祉における虐待防止に関しては、平成24(2012)年10月1日から「障害者虐待防止法」が施行されています。
 同法の目的は、虐待を防止することによって障害者の権利および利益を擁護することにあります。
 同法においては、「障害者虐待」を虐待の主体に着目して以下の3つに分類しています。
① 養護者(障害者をお世話しているご家族等)による障害者虐待
② 障害者福祉施設従事者等(障害者施設や障害福祉サービス事業所の職員)による障害者虐待
③ 使用者(障害者を雇用する会社の雇用主等)による障害者虐待
 このどの関係者においても虐待行為は許されることではなく、同法には、全ての人は障害者を虐待してはならないと定められています。
 さらに、以下で定義されている「 障害者虐待」を受けたと思われる障害者を発見した人(障害者虐待の疑いに気がついた人 )は、市町村等へ速やかに通報する義務 があるとする、幅広い通報義務が定められています。通報先は、全て市町村です。
 同法では障害者への虐待に関しては、次の5つを定義しています。
① 身体的虐待(叩く、殴る、蹴る、つねる、正当な理由がない身体拘束等)
② 放棄・放置(食事や排泄、入浴、洗濯等身辺の世話や介助をしない等)
③ 心理的虐待(脅し、侮辱、 無視、嫌がらせ等で精神的に苦痛を与える等)
④ 性的虐待(性交、性器への接触、裸にする、わいせつな映像を見せる等)
⑤ 経済的虐待(本人の同意なしに年金・賃金・財産や預貯金を処分する等)
を行った場合、となっています。

■安全委員会の会議風景:毎回、詳細な資料を用意し、写真やグラフなど視覚的資料はもとより、映像などの資料も駆使して、より深い議論、理解につながるように工夫している。時にはオンラインでの開催も行う。

【ウラ面】

令和4(2022)年4月より
虐待防止に関しては、
さらに一段と厳しい扱いに。

 「障害者虐待防止法」に関して、各サービス事業提供者は、以下の対応が求められています。
①従業者への研修実施の義務化
②研修実施や虐待が起こりやすい職場環境の確認、改善を行うための組織として虐待防止委員会の設置を義務化
③虐待の防止等のための責任者の設置の義務化
 上記のうち、①、③は既に努力義務となっており、②は令和3(2021)年4月から努力義務化となっています、そしてさらには令和4(2022)年4月からは①から③まですべてが義務化となります。
 障がい者へ対する虐待に関しては、より具体的な事例を学ばないと、正しくは認識できません。特に前述した5つの虐待のうち、。① 身体的虐待、④ 性的虐待、⑤ 経済的虐待に関しては比較的分かりやすいのでしょうが、② 放棄・放置(ネグレクト)や③ 心理的虐待に関しては、知らず知らずのうちに、つい行ってしまっている場合も多いようです。

心理的虐待や
放棄・放置(ネグレクト)は
知らず知らず行っている可能性が。

 下図は厚生労働省の「障害者福祉施設等における 障害者虐待の防止と対応の手引き」からの引用ですが、心理的虐待の【具体的な例】の項を見ると、「・「バカ」「あほ」等障害者を侮辱する言葉を浴びせる・怒鳴る ・ののしる・悪口を言う・仲間に入れない ・子ども扱いする ・人格をおとしめるような扱いをする ・話しかけているのに意図的に無視する」とあります。また放棄・放置(ネグレクト)に関して「・食事や水分を十分に与えない・食事の著しい偏りによって栄養状態が悪化している ・あまり入浴させない ・汚れた服を着させ続ける ・排泄の介助をしない ・髪や爪が伸び放題 ・室内の掃除をしない ・ごみを放置したままにしてある等劣悪な住環境の中で生活させる ・病気やけがをしても受診させない ・学校に行かせない ・必要な福祉サービスを受けさせない・制限する ・同居人による身体的虐待や心理的虐待を放置する」と紹介されています。
 これらの行為は、無意識もしくは知らず知らずのうちに行っている行為かもしれません。当法人ではご利用者を「~~ちゃん」「~~くん」と呼ぶ行為も虐待にあたるとし、改めるようにしていますが、親近感を持つと、ついつい行ってしまう表現です。虐待防止も安全管理も必要となるのは正確な情報収集と学習になります。そのため安全委員会では、都度、必要な研修を受講し、情報を最新の内容にアップデートすることを怠らず行っています。
 大事な事は安全管理も虐待防止も日常の中で、どれだけ意識して対応するのかにかかっているという事です。
 年明け早々にはオミクロン株が猛威をふるい、一般の風邪や季節性のインフルエンザなみの感染力となっています。ウイルスの危険性の確認をもとに、一刻も早い国の新たな方針を打ち出していただきたい気もしますが、各現場、事業所においては日々、基本動作を忘れずに感染予防、虐待防止に向かい合っています。

■「障害者福祉施設等における 障害者虐待の防止と対応の手引き」より抜粋
平成30年6月 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部
障害福祉課 地域生活支援推進室
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000211204.pdf