vol.009(21/11/15発行)『再び、障がい福祉グループホームについて』

【オモテ面】

本紙は、vol.001の障がい福祉グループホームの紹介、それを推進している当法人の紹介から始まり、
時々の時事的情報に触れながら、障がい福祉に関する現状をご理解いただくべく情報発信を続けています。
障がい福祉グループホームは、最近は新しいビジネスチャンスのように紹介され、新規参入される方も増えてきています。
今回は、これまで各種情報を確認してきた上で、改めて、障がい福祉グループホームの在り方を考えてみたいと思います。

多様な障がい福祉事業の中で
なぜグループホームが
重要だと言えるのか?

 厚生労働省が定めている障害福祉サービスは、下記の図にあるように多岐にわたっています。
 当法人では、この中でも「共同生活援助」と呼ばれるグループホームを中心とし、就労継続支援B型事業所、生活介護、放課後等デイサービス等のサービスを提供しています。中でもグループホーム事業を中心としています。
 なぜ、グループホームを重要視し、中心に考えるのか?それはグループホームは「住まい」であり、「生活の基盤」となる場所であるからです。
 もちろん生きていく上で必要となる収入を得るためのお仕事の場や、重度の障がいをお持ちの方においては介護的サービスも必要となります。それが故に図表にあるように様々な障害福祉サービスが用意されているとも言えます。
 障がい者と言っても、そのご状況は本当に様々ですが、どのサービスをご利用になるにしても「住まい」が無ければ生活は成り立ちません。特に障がい者における『8050問題』は極めて深刻であり、日常的に「この子を残したままでは死ぬに死ねない」との親御さんの思いをお聞きすると、心から「一室でも多く、一日でも早く。親亡き後も安心して暮らせる住まいを!」との決意で取り組んでいかなければと思わされます。
 しかし、グループホームは全国的に見ても、まだまだ足りていません。左図の利用者数、施設・事業所数を見ても明らかです。

障害福祉グループホーム事業の
推進の上で、
課題となっているのは何か?

 平成25(2013)年の「障害者総合支援法」の施行以来、障害福祉サービスを行なう事業者にとっての環境は整ってきました。その後、グループホーム事業を手がける事業者も増えてはいますが、まだまだ進んでいないというのが実情です。 大きな理由の一つにグループホームという「住まい」であるが故に、不動産や建築に関係する要素があり、他の障害福祉サービスと比べても資金が必要となると思われているからだと思います。また、それに関連する知識やノウハウがないと外部委託となり、コストがかかると思われているからではないでしょうか?
 私たちは、障がい福祉に関連する事業を推進する法人として、太陽と月社を運営しています。同社では建築業の免許を取得し、この面でも円滑に事業が進められるような体制を整えてきています。
 また実際の事業展開の中で、不動産や建物に関する各種経験から様々なノウハウを蓄積してきています。

※出典:「障害福祉施策の動向について」厚生労働省 社会・援護局 障害福祉保健部 企画課作成

【ウラ面】

グループホーム事業は、
数ある障害福祉サービスの中でも
中核となる事業である。

 先に紹介したように障害福祉サービスには様々な種類が存在します。その中でも当法人がグループホーム事業を中心とするのは、先述した通りですが、事業運営という視点で見るとグループホーム事業は障がい福祉事業全体の中核になると考えています。
 分かりやすい事例で言い換えると、電鉄会社が線路を敷き、電車を通すことで路線周辺の不動産開発や流通業をはじめとした店舗開発、サービス業開発などの関連事業を展開するのと同様の状況になると言えます。
 したがって単に「住まい」を提供するだけではなく、生活することに関連する就労支援やそれに伴うお仕事開発、先々のご利用者となる障がい児を対象とした放課後等デイサービスなどへと広がっていきます。
 当法人においても法人設立後、まずグループホーム事業を開始し、その後、就労継続支援B型事業所、放課後等デイサービスを開始しています。今後も必要に応じて他の障害福祉サービスを追加する予定でいます。いずれにしても「住まい」のご利用者がいて、派生していった事業であると言えます。

ご利用者の皆様の目線に立った
発想をしているのか、否か?
それが重要なポイント。

 現在、民間企業によるグループホーム事業がFC展開をはじめとして増えてきています。その状況を見て「グループホームを建てれば利用者が埋まるという時代は過ぎた」と発言される行政のご担当者もおられます。確かに安易に「通常の賃貸物件経営に比べ、入居顧客が確実に確保できる」という発想ではうまくいかないケースも増えてきています。そこにはあくまでも『ご利用者目線』で考えているのか、否かというポイントがあります。
 当法人においては「ご利用者の皆様の笑顔一つ増える福祉支援」を合言葉に事業を進めています。そして、それは日々の支援活動の中で地道に培われたものであり、絶えずトライアル&エラーを繰り返して導き出したノウハウなのです。
 障がい者と一口に言っても、身体の方、知的の方、精神の方、それぞれの特性があり、例えば知的の方であっても障がいの内容、障がい特性によっても異なります。当法人のグループホームのご利用者は、知的や精神の方が多い状況ですが、障がい特性によっての差異もありますが、同じ障がい特性であっても個人個人によって、特性は異なります。
 結局はご利用者お一人おひとりをよく見て、何を求めておられるのか?よく耳を傾け、また必要となる障がい特性に関する知識を学び、担当職員で情報共有を綿密に行なう、という日々の地道な積み重ねを怠らずに行なうことに尽きると言えます。
 さらに言うならば、大きな方針はあったとしても、ご利用者の皆様の状況を見て支援の仕方を日々進化させていく、場合によっては大きく変化させることも恐れないことが重要であると言えます。
 私たちは、日々の活動を通じて実感するのは、障がい者と呼ばれる方々とそうでない方々とでは、何も変わらない、同じ人間であるということです。極論すれば、障がい者でない方であっても障がい者の皆様よりも問題が多い状況の方さえおられるとも言えます。大事なことは「障がい者」という存在を一括りでとらえるのではなく、お一人おひとり個性があり、特性があり、それを大事にする必要があるという事です。
 本紙は障がい福祉という、一般の方々は言葉は知ってはいるものの、その実態を良くご理解されていない内容を客観的、公的なデータを中心に説明しています。今後もその基本方針は変わりませんが、それに加えて、実際の各事業所における支援の様子を交えてご紹介していきたいと考えています。