【オモテ面】

我が国の障がい福祉の歴史は、戦後から始まりますが、現状のように整ってきたのは平成25(2013)年4月1日に施行された『障害者総合支援法』からなのです。
まだ10年にも満たない歴史ですが、この『障害者総合支援法』が成立するまでに様々な紆余曲折がありました。
今回は、我が国における障がい福祉施策の歴史に関して確認していきたいと思います。

平成年間に入って加速された
障がい福祉に関する
各種法律と施策

 障がい福祉施策は、昭和45(1970)年に制定された「心身障害者対策基本法」をベースとした『障害者基本法』(平成5(1993)年制定)が基本となっていますが、各障がいに対して『身体障害者福祉法』(昭和24(1949)年制定)、『知的障害者福祉法』(精神薄弱者福祉法として昭和35(1960)年制定)、『精神保健福祉法』(精神衛生法として昭和25(1950)年制定)のそれぞれの法律があります。
 下図は厚生労働省が発表している『障害福祉施策の動向について』という資料に補筆した図ですが、各施策の元となる法律が平成年間に入って整ってきた様子が分かります。
 中でもポイントとなるのは、①平成15(2003)年の「措置制度から支援費制度への転換」、②平成18(2006)年の『障害者自立支援法』の施行、③平成25(2013)年の『障害者総合支援法』の施行、そして④平成28(2016)年の『障害者差別解消法』の施行であるといえます。

 まず①の「措置制度から支援費制度への転換」ですが、それまでは利用者においては行政が指定した事業者以外の選択が出来ませんでした。しかし支援費制度に変更されたことで、利用者が自由に事業者を選択することが可能となったのです。次に②の『障害者自立支援法』ですが、この法律は障がい者支援にかかる費用を利用者による応益負担(定率負担)を求めるという点で、違憲訴訟が起こされるなど課題の多い法律でした。本稿の参照資料となっている厚労省の『障害福祉施策の動向について』の中にも、この違憲訴訟に関する基本合意の結果が掲載されていますが、結局は改正法が施行されるなど修正が行われるとともに③平成25(2013)年の『障害者総合支援法』の施行へとつながって行きます。この『障害者総合支援法』が現在の障がい福祉施策の中心となっており、各種の障がい福祉サービス事業が成り立って行くベースとなっているわけです。

障がい者においても
日本国憲法の基本的人権は
保証されている

 と共にノーマライゼーションの進展のためには不可欠となる④平成28(2016)年の『障害者差別解消法』が施行されるのですが、本来、障がい者の各種権利は日本国憲法の基本的人権に基づいて保証されているはずなのです。
ところが、わざわざ「差別の解消」を目的とした法律を施行しなければならないほど障がい福祉は遅れていたと言わざるを得ません。
 いずれにしても我が国の障がい福祉施策は、わずか10年程度の歴史の中で整い、進んで来ているわけなのです。つまり日本の障がい福祉施策の歴史は、まだ始まったばかりのような段階にあり、大切に育てていく必要があります。

【ウラ面】

障害者総合支援法に基づいて
現在の各種障がい福祉サービス
が施行されている。

 前述したように、現在の障がい福祉サービスは、平成25(2013)年の『障害者総合支援法』の施行によって成立していると言えます。
 下図は、『障害者総合支援法』の施行に向かって進められた既存法の修正や整備作業の概要を表したモノですが、赤い下線を補筆してある箇所が、グループホームや放課後等デイサービスに関する改正施策を明示した箇所となります。
 ※なお障害児支援は『児童福祉法』に基づいて施行されており、放課後等デイサービスに関して対応する法律は『児童福祉法』となっています。つまり18歳までの「障がい児」と19歳以降の「障がい者」というように、年齢によって障がい者支援と障がい児支援に対応する法律が分かれています。

 下図は『障害者総合支援法』によって、ご利用者である障がい者・障がい児に対して、どのように障がい福祉サービス事業が提供され、各事業者に対して市・町・村の地方自治体、都道府県、国からどのように支援(給付)がされているかの関係を表した図です。
 障がい福祉サービスは、大きく分けて「介護給付」「訓練等給付」「相談支援に係る給付」「障害児支援に係る給付」と4つの給付別に分かれており、さらに個別のサービスに分かれています。

『障害者総合支援法』により
精神障がい者の方への
支援の幅が広がった。

 『障害者総合支援法』の果たした役割の中で、大きな出来事として精神障がい者に対する支援が強化された点が挙げられます。一定規模以上の企業や団体に障がい者雇用を促進させるために障害者雇用率制度がありますが、以前は精神障がい者の方は、この制度の雇用対象となっていませんでした。しかし『障害者総合支援法』の施行により、企業・団体側にとっても雇用対象となり法定雇用率に換算できるようになりました。
 これにより大きく動いたのが人材派遣業界でした。それまでも紹介予定派遣という正社員雇用を紹介する前提での派遣の仕組みがありましたが、その対象者に精神障がいの方々が多く組み込まれるようになりました。特にSEやプログラマー等でうつ病や統合失調症になる方が多くみられ、そのような方々を中心に紹介予定派遣が行われるようになり、人材派遣業界においては大きなエポックメイキングとなったのです。
 これは法定雇用率の達成に苦しむ企業にとって、紹介予定派遣という形で人材派遣会社から精神障がいの方の人材を紹介され、自社の雇用ニーズに合えば正社員として採用することで人材獲得と法定雇用率の達成を同時に満たすという状況が生まれた訳です。
 本紙第5号でも紹介したように、障がい者の方々にとっては一般就労が憧れであるわけですが、そのための機会が拡大されたわけです。
 このように障がい福祉は、一つの法律の在り様で大きく変化するモノであり、平成25(2013)年の施行から、まだ8年の『障害者総合支援法』が大きく影響を与えたように、我が国の障がい福祉は、まだまだ緒に就いたばかりであるのです。