vol.005(21/07/15発行)『増え続ける障がい児と発達障害』

【オモテ面】

現在、日本は『少子化』の流れの中にある事を大半の方々はご存知かと思います。
そして、この『少子化』であることが、経済をはじめとする様々な課題を引き起こしているのも事実です。
ところが、この『少子化』の流れの中で、なぜか障がい児(18歳未満の障がい者)は増え続けているのです。
障がい児向けの障がい福祉サービスに『放課後等デイサービス』があり、この通称「放デイ」の事業所も増えているのです。

26年間で約11倍に。
少子化の流れの中でも
増え続ける障がい児の実態。

 下図は文部科学省の「令和元年度 特別支援教育に関する調査の結果について」というページに掲載されている、平成5(1993)年から令和元(2019)年までの26年間の障がい種別の障がい児数の推移データをグラフ化した図です。

■令和元年度 通級による指導実施状況調査(別紙2)

 ご覧いただくとお分かりのように、この26年間で障がい児数が12,259人であったのが134,185人と10.9倍に増えているのです。『少子化』の中で障がい児数は約11倍に増えているという異常な状況にあると言えます。グラフで見ると一目瞭然ですが、年々増加の一途をたどっています。
 この原因に関しては識者の間でも食べ物に原因があるとか、ネオニコチノイド系の農薬に原因があるなど諸説ありますが、確たる理由は不明のままです。

 もちろん発達障害という概念が広く認知されるようになったという点は否めません。
 発達障害という用語は昭和38 (1963)年、アメリカ合衆国の法律用語として誕生し、日本に入ってきたのは、1970 年はじめと言われています。(東京都多摩府中保健所作成『支援者のための地域連携ハンドブック~発達障害のある子供への対応』から)
 概念に関しては年々変化している面もありますが、ここでは上記の図を含め、厚生労働省の「発達障害の理解のために」(https://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html)のページを元に紹介します。

■発達障害者支援法ができるまで
 「発達障害」は、身近にあるけれども、社会の中で十分に知られていない障害でした。また、「発達障害」のある人は、特性に応じた支援を受けることができれば十分に力を発揮できる可能性がありますが、従来はその支援体制が十分ではありませんでした。

■発達障害ってどんな障害?
 発達障害者支援法(平成17(2005)年施行)において、「発達障害」は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。

 上図で紹介したのは発達障害の代表的なタイプですが他にも様々なタイプの特性があります。また、これらの特性だけをもって断定されるものではありません。 「自閉症」「アスペルガー症候群」「学習障害(LD)」「注意欠陥多動性障害(AD/HD)」「その他の発達障害」の他にも、「トゥレット症候群」のように「運動性チック症状」「音声チックを主症状とするタイプ」も、発達障害者の定義には含まれています。
 確かに発達障害という認識が広がった事、さらには概念定義や認定のされ方も年々変化していることもあり、それらが統計的に障がい児が増加している要因であるとも思われます。しかし毎年増加している点は看過できません。

【ウラ面】

増え続ける障がい児に対応した
『特別支援教育』を
文部科学省が推進。

 いずれにしても間違いないのは障がい児が年々増え続けているという事です。これにともない、文部科学省では特別支援教育という施策がとられています。特別支援教育とは、日本の学校教育において、障害のある幼児・児童・生徒の自立や社会参加への主体的な取り組みを支援するための指導及び支援を意味する概念を指します。平成18(2006)年3月の学校教育法等改正を受け、翌、平成19(2007)年4月に特別支援教育の本格的実施が開始されました。
 それまで養護学級や特殊教育と呼ばれていた状況から、全国各地に特別支援学校が設立され、普通教育の現場には特別支援学級が設立されています。
 この状況は本紙vol.3の『ヤングケアラー』の記事の中でも紹介していますが、特別支援学校や特別支援学級における生徒数も当然ながら増加しています。

■文部科学省サイトより 日本の特別支援教育の状況について

障がい福祉サービスの一つ
『放課後等デイサービス』
の開所が増加。

 また一方で増え続ける障害児への対応を行なう障がい福祉サービスが『放課後等デイサービス』です。略称として『放デイ』とも呼ばれています。『放デイ』は年々開設される件数が増えてます。残念ながら悪質な事業所ではアニメのマンガを鑑賞させて時間を費やすのみといった所もあると聞きます。
 放デイにおいては、ご利用者である障がい児の方々お一人お一人の障がい特性に合わせた療育を行う必要があります。ご両親もしくは保護者の方々と相談支援員さんを交えて、個別支援計画を策定し、目標とそれを実現していく上での支援の在り方を綿密に組み立てていきます。
 発達障害の場合は就学以前の早期発見、早期対応が重要との指摘もあり、放デイ以前の課題も存在します。いずれにしても支援は早期スタートの方が、より成果が出やすい傾向があります。ともすると施設利用自体をなかなか決断できずに遅れるケースもあります。一日でも早く、お気兼ねなくご相談されると良いと思います。